2010/11/03

火の鳥


photo:akihito 携帯で

これは僕が数年前に(残念だが子供の時ではなく3年くらい前)遊びで作った粘土の鳥人間です。正直なぜこんな気味の悪い物を作ったか自分でもよくわかりません。
僕が作る物や描く絵はいつも決まって奇妙な物だったので僕が創作という物に関わる度、母は僕の精神状態を心配していたようです。
母はこの奇妙な鳥人間を「捨てるに捨てられない」と言って部屋に飾っていました。

そして先日、亡くなった母の棺桶に何を一緒に入れてあげるかと言う話になりました。目を瞑れば母はいつもそこにいて全てを見ていてくれるだろうと信じる僕は、自分との思い出の物や写真を入れる事なく、なぜかこの鳥人間を一緒に持っていってもらう事にしました。

「鳥人間よ、無事に母をあの世に案内しろよ。お前の最後の役目だ。」
「はい!トリは最後にやるものです。」

ボケた事を誰にも気付かれないような、こんなやりとりがあったかはどうかは覚えてないですが、とにかく僕は想いを鳥人間に託しました。
そして火葬が終わり、僕は変わり果てた母の姿に言葉を失いました。
姉や弟は泣いていたかも知れません。
順番に骨を箸で摘んで納骨し、僕らは儀礼的に母の死を受け入れました。
ただうちの母はいつだって僕達を楽しませてくれます。
それは今回も同じでした。
全て焼き尽くす1200℃の炎の中で火葬された棺桶の中から、なんと鳥人間が生還したのです。色を変えて骨の間にちょこんと座っていました。
母がいらないと言ったのでしょうか?
それとも鳥人間の中に身を移し炎に耐えて戻ってきたかったのでしょうか?
僕らはとにかく笑いました。
係の人はまだ多くの骨が残された棺桶を覗き込んで爆笑している僕達家族を見て、とても奇妙に思った事でしょう。
今、冷静に考えれば工作用とはいえ粘土が炎に強いのは当たり前の事なのかも知れません。
ただ、これは僕達にとってはある時期が来ると炎の中に飛び込み、そして新しい体で生まれ変わる、あの火の鳥のように思えるのです。大切な宝物になりました。

それにしてもさすがだぜ!


↑戻ってきた鳥人間(ますます気持ち悪くなってしまった…)