2010/10/23


photo:akihito

休日はどこか遠くに行きたい。良い休日を過ごしたい。だから外に出かけて気分転換し、ついでに写真を撮ってる。僕にとっては写真はただの趣味の一つでしかなく、無いなら無いで別にいいのだ。その思っていたはずが、いつからか見るもの全てが被写体に見えてくるようになった。
常に被写体になるかならないかを判断してるし、いくら気持ちの良い場所にいたって被写体にならないと判断したら全く興味を持てなくなってしまっている。紅葉が目当てで山に行っても人工的な柵が邪魔で絵にならないと感じたら、本来の目的を忘れてもう紅葉すらどうでも良くなってしまうのだ。撮影禁止の美術館や映画館、その類の物はもはや苦痛でしかない。最近はそれが景色だけではなく物や動物、さらには人に対してもそう思うようになってしまった。
乗っていた軽自動車はアウトドア感がないという理由で売ってしまったし、服がイメージと合わないという理由で友達に服を買って着替えさせた。家で飼って可愛がっていた犬は“孤独な男の相棒”と呼ぶにはふさわしくない体つきだったので使い道がわからず逃がしてしまった。
僕は家族に対しても不満も持つようになった。
良い被写体になる家族というのはやっぱり田舎に住んでいなきゃいけないと思う。僕が数年ぶりに故郷に戻ると、そこには何年経っても変わらぬ景色があり、懐かしい風が吹いている。僕は畑の真ん中にいる母に向かって大きく手を振り、帰郷を知らせ、姉は「そんな気がしてたの」と僕に言い、弟は相変わらずのわんぱくぶりで、洗濯したばかりの服をまた泥だらけにしたという理由で母から叱責を浴びている。僕の帰郷を知ったお隣のやっちゃんは僕の為に明日カスタードパイを焼いてくれるそうだ。その全てが懐かしい。
そして父…僕がそっと父の部屋に入り「帰りました」と報告すると父はこちらを向かずに一言だけ何かグッと来る言葉をかける…。
僕は写真を撮る。タイトルは「思ひ出(い)づる 故郷」

家族に東北に引っ越してくれないかとお願いしたが、馬鹿いうなと言われてしまった。

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